山の中でじっくりと「葉枯らし乾燥」
私たちは日々、山の仕事をしています。
木を植え、育て、間伐をし、何十年もかけて一本の木と向き合う。林業というのは、本当に気の長い仕事です。
そして、ようやく伐る時期を迎えた木も、伐ったらそれで終わりではありません。
木をどう伐り、どう乾かし、どう使ってもらうか。そこまで考えるのが、私たち山守の仕事だと思っています。
あえて山で寝かせる「葉枯らし乾燥」
吉野林業には、古くから受け継がれてきた「葉枯らし」という方法があります。
木を伐った後すぐに山から搬出するのではなく、枝葉をつけたまま、しばらく山の中に寝かせておくのです。
葉から水分を蒸散させながら木をゆっくりと乾かしていく。
昔から山で行われてきた天然乾燥の知恵です。
「葉枯らし」をするとどんな良いことがあるのでしょうか。
1.水分を抜くことで木を軽くして、運搬しやすくします
木は立っている間、たくさんの水を吸って生きています。
杉は特に水をよく吸う樹種です。
伐ってすぐの丸太はとても重く、運び出すには機械を使ってもかなりの力が必要になります。
昔は手作業だったことを考えれば、山の中で少しでも木を軽くしておくことは理にかなっていたわけです。
2.色味を美しくします
杉の中心部分は「赤身」と呼ばれ、建具材として重宝されます。
赤身の色には個体差があり、黒っぽいものから淡いピンク色のものまで様々です。
山で「葉枯らし」をして水分が抜けていくと、赤身の色にも変化があらわれます。
赤身の中でも特に良いとされる「淡紅色」へと美しく変化するのです。

森庄銘木では、夏に「杉皮取り」をおこないます。
「杉皮」は伝統的に社寺仏閣の屋根や壁の化粧(装飾)に使われている素材です。
杉皮取りについてはこちら(※ページ調整中)



「杉皮取り」を終えた杉の木を夏の間の数か月、山に寝かせて「葉枯らし」をするのが私たちの夏の間の林業です。

今の時代、何事も早く、効率よく進めることが求められます。
しかし、木には木の時間があります。
山の地形や日当たり、季節、天候、そして一本一本の木の状態を見ながら、いつ伐り、いつ搬出するのかを判断する。何でも機械や数字だけで決められるものではありません。
手間も時間もかかりますが、こうした仕事にこそ、長年山と向き合ってきた人間の経験が生きるのだと思います。
山の中で時間をかけて乾燥させた原木は、その後、搬出され、原木市場へと運ばれます。


今回、宇陀の山で育った樹齢約80年の吉野杉を葉枯らし乾燥させ、10月の原木市場に出荷しました。
ありがたいことに、木目の細かさや色味の良さを高く評価していただきました。
年輪の詰まり具合、色合い、真っすぐさ、節の出方。その違いを見極め、木の持ち味を生かせる用途を考える。
原木市場には、そうした木を見る目を持った方々が集まります。
木を育てる山の人間だけでは、良い木材を世の中に届けることはできません。
木を買い付ける方、製材する方、加工する方、そして建築に使ってくださる大工や職人の皆さん。
それぞれの技術と経験があってこそ、山で育った一本の木が、価値あるものになっていきます。
そうした木に関わる職人の皆さんの仕事を、いつもありがたく思っています。

先人が育てた木を、次の世代へ
今回の杉は、約80年前に植えられた木です。
当然、私たちが生まれる前から、この山で育ってきた木です。
植えた人がいて、下草を刈った人がいて、間伐をして、長い年月守ってきた人たちがいる。
その積み重ねがあって、ようやく今、私たちが一本の木を市場に送り出すことができます。
林業は、自分一代で完結する仕事ではありません。
私たちは先人が残してくれた森で仕事をさせてもらい、今度は次の世代へ森を残していく立場にあります。
森庄銘木は、来年2027年に創業100周年を迎えます。
時代とともに林業のやり方も、木材の使われ方も変わってきました。
それでも、一本の木を大切に育て、その木の良さをできるだけ引き出し、必要としてくださる方へ届けるという仕事の基本は変わりません。
これからも山をよく見て、木をよく見て、職人の皆様と力を合わせながら、次の百年へつながる森づくりを続けていきたいと思います。




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